“男が見習ってほしい!”海や川の生き物3選 2020.05.31 スキューバダイビング
自然界には子孫繁栄の大原則の下、さまざまな生き方をすることで種の絶命を回避しようと努力するオスとメスの姿があります。
現在、地上の食物連鎖の頂点に立っている人間。子孫繁栄という考え方がほかの生き物に比べると比較的薄くなってきているため、男性女性という性別にイメージされる役割にとらわれながら生活している様に見えます。
表題は、『男が見習ってほしい!海や川の生き物』としましたが、比較的自由(にならざる負えなかった)な海や川の生き物たちを観察することは、男性だけでなく女性にとっても生き方の多様性を改めて考える良いきっかけになるかもしれません。
さっそく海の生き物の生き様をのぞいてみましょう。
【目次】
- 1.絶望してる暇はない!今を懸命に生きる「ヤマメ」や「イワナ」
- 2.合理的に考えたらイクメンは常識 「ネンブツダイ」
- 3.体の構造もジェンダーレスな「オキナワベニハゼ」
海の生き物を紹介するのは…
SOTOASOBIナビゲーター 染谷遥/Profile:今まで人間として文明の恩恵をぬくぬくと受けてきたが、一方で自然の生き物の一員として生きられない自分に一抹の寂しさも抱えている。海の生き物に並々ならぬリスペクトを払っている。
絶望してる暇はない!今を懸命に生きる「ヤマメ」や「イワナ」
オスとメスの数だけ生まれる男女のドラマ。
ドラマの陰には、種の生き残りをかけたオスとオスとの激しい縄張り争いや力比べが繰り広げられています。
淡水魚のヤマメやイワナが子孫を残す際に特に重要視しているのは出産場所。川で出産放流する都合上、大海とは異なり、一定の範囲内で最適な出産場所を確保することが重要です。
そのため、オス同士は最適な出産場所を確保するために縄張り争いをし、勝ったオスだけがメスを縄張り内に受け入れ、産卵させ放精(卵に精子をかけることが)できます。
体の大きさや力、スピードなどが生まれつき優れているオスはもれなく勝者。
持って生まれたもので勝負しなければならない残酷な世界です。
それでは、生まれつき小さくて、力も弱くて、あまりスピードも出せないオスたちは敗者で終わりなのでしょうか。
ここで終わらないのが敗者のヤマメンズたち。
負けてしまったオスは、水草の陰にひそみ、今まさに卵に精子をかけようとしている勝ちオスめがけて猛突進。勝ちオスがあっけにとられている隙に卵に放精するのです。
人間で例えると、お目当ての女性が他の男性と今まさにベッドインしようというときに、「ちょっとまったー」と割り込んでいくような行為に近いかもしれません。
極端に脳が発達している人間は、脳にかけるエネルギーコストが多いので、恋敵にかなわないとみるや絶望して終わりがち。しかし脳の領域が圧倒的に少ないヤマメやイワナには絶望という概念がありません。
自分に残っているパワーをすべて使って今できることに集中。今にすべてをかけているのです。
[ヤマメ]
分類:サケ目サケ科
生息域:北海道から九州までの川の上流
特徴:流線型の魚形とパークマークと呼ばれる模様が人気なことから、渓流の女王と呼ばれている。高級魚としても名高く、天皇陛下への献上品にもなっている。性格は繊細で臆病と言われることが多い。
[イワナ]
分類:サケ目サケ科
生息域:北海道から九州までの川の最上流
特徴:ヤマメよりも冷たい水が好き。生息域の最上流は羽虫などのエサが少ないため、口に入るエサは何でも食べる必要あり。そのため性格は獰猛といわれてしまうことが多い。スポーツフィッシングの対象魚として人気なことから、渓流の王様と呼ばれている。仲間がたくさん。アメマス、オショロコマもイワナ属。
2.合理的に考えたらイクメンは常識 「ネンブツダイ」
まず、魚類は子育てをするのかということですが、一般的な魚類は子育てをしません。産んだら生みっぱなしです。
メスが産んだ卵にオスが精子をふりかけて受精させたら、そのあとはほったらかし。運よく他の生き物に食べられずに生き残った卵から稚魚が勝手に孵化します。
でもその代わり、たくさんの卵を産まなければなりません。
運に頼らず合理的に卵の生存率を高めるために、オスが育児に協力して種を守っている魚がいます。
それがネンブツダイ。メスは産みっぱなしで、卵が孵化するまでオスが子育てする魚です。
ネンブツダイのオスは口の中で卵が孵化するまで守ります。なんと約2週間も飲まず食わずなのだから驚きです。
しかも、ただ口の中に入れて守っているわけではありません。卵に新鮮な海水が当たる様、常に口をモゴモゴ。
メスの方が楽をしているように見える子育て方法ですが、全体的に見るとそうでないことが分かります。
オスが卵を保護する行動を取る代わりに、メスは卵の数を減らし、卵を大きくして産んでいます。
卵が大きい分、メスが産卵に要するエネルギー量は、ほかのほったらかしの魚たちよりも多く、母体へのダメージが大きいのです。
出産から育児までメスに任せたら、育児の最中にメスが力尽きて、死ぬかもしれません。
そうなったら卵もろとも台なしです。
精巣から精子を生産し、振りかける運動を担当するオスのエネルギー量はメスに比べ比較的少ないので、子育てをオスが担当するのは至極合理的だといえます。
出産や育児の大変さをどこまでネンブツダイのオスが分かっているのか知りませんが、見える化しにくいエネルギーコストを配慮して、協力する姿勢は合理性の極み。
人間界では男性の役割をしているパートナーが育児に協力するとイクメンだともてはやされますが、それはつまるところ、男性は本来育児に参加しないものであるという固定概念があるからではないでしょうか。
育児をしない代わりに、男性は社会に出て仕事をするものだという固定概念もいまだ厳然としてあります。
魚の世界では、固定概念というものはありません。合理的に考えてそれが得だからやっているだけなのです。
[ネンブツダイ]
分類:スズキ目テンジクダイ科
生息域:海水。北は青森、南は宮古島まで幅広い。
メモ:冷たすぎる水は苦手。できれば15度くらいあると嬉しいらしい。夜行性なので昼間はゆっくり海を漂っている。上唇の先に突起が突き出ているのがオス。
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3.体の構造もジェンダーレスな「オキナワベニハゼ」
現在の人間社会では女性の社会進出が盛んになり、女性も自己主張がしやすい世の中になりました。
出産、子育て、一家の台所を守るなど従来女性が担ってきた役割に加え、今まで男性が担っていた実社会での仕事も受け持つようになりました。
裏を返せば、子どもさえ作れれば、女性にとって男性はもう用済みということもできて、働くことで認められていた人間のオスにとっては、それだけでは生きにくい世界になりつつあります。
男女平等運動が起こってから半世紀の間で、男女の生き方の多様性は認められて、広がりを見せたのにも関わらず、体のDNAだけ太古の昔から変わらないなんて残酷な話です。
人間も必要に合わせて何度も性転換できればいいのにということで、いつでも何度でも性転換できるオキナワベニハゼを紹介します。
性転換する魚はたくさんいますが、オキナワベニハゼはオスになってもメスになっても体内に卵巣と精巣を両方残すことができる珍しい魚です。
群れの中にメスが必要ならメスに。オスが必要ならオスにと思い立ったら30分以内、行動にメス化オス化が現れ、早くて5日以内に体内の構造も性転換できるというから驚きです。
オスメスどちらの性別も捨てきらない、究極のジェンダーレスな魚を見ていると、
人間界の男性女性それぞれに求められる男女の役割について改めて考える良いヒントをもらえそうです。
女性らしく男性らしくとよく使われてきた従来の言葉は、結局、人間社会の秩序を維持するための便宜上の言葉であるにすぎないのかもしれません。
[オキナワベニハゼ]
分類:スズキ目ハゼ科
生息域:海水。北は青森、南は宮古島まで幅広い。
メモ:名前にオキナワとあるが、鹿児島県でも観察できる。泳がないときはサンゴや岩盤にお腹を付けるようにして休む。逆さになっても平気。
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沖縄本島中部・北谷でダイビングサービスを提供するアルファダイブ沖縄では、同じ海は二度とないをテーマに、通年を通してその日一番の海を案内しています。
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- 沖縄県中頭郡北谷町宮城2-95 賀数ビル101
自然には生きるヒントがたくさん
自分たちが作り上げた文明社会から離れて生きられなくなってしまった人間ですが、たまには、自然の中に身を置き、生き物たちの生き方を今一度振り返って、かつて自分も動物であったことを思い出すのもいいかもしれません。
アウトドアレジャーの予約サイト「SOTOASOBI(そとあそび)」では、全国の体験ダイビングツアーを紹介しています。旅行前にチェックしてみてくださいね。
(文:染谷遥)
※掲載されている情報は公開日のもので、最新の情報とは限りません。
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