沖縄県慶良間諸島・阿嘉島に移住したダイビングインストラクター夫妻が伝えたかったこと 2019.01.29 スキューバダイビング 慶良間諸島
世界トップクラスの透明度を誇るケラマブルーの海。
慶良間諸島を構成する島々の1つである阿嘉島(あかじま)は、島民250人ほどの小さな島で信号もコンビニもありません。
便利なものはほとんどないけれど、この島には美しい海と豊かな自然があります。
島のどこにいても海の気配を感じ、何もしなくても体も心もゆるりとほぐれ、いつの間にか自然のリズムになじんでいく…。
そんな阿嘉島に2000年移住し、「Dive Service からはーい」というダイビングショップを立ち上げインストラクターとして暮らしている大島さん夫妻を、私そとあそびナビゲーター・山川朝未が取材しました。
【目次】
-街育ちの2人がスキューバ・ダイビングに出合うまで
-ついに地元から離れ、阿嘉島へ
-取材後記〜そとあそびナビゲーター・山川が最後に感じたこと〜
-大島さんご夫妻のツアーに参加したい人はこちらから!
街育ちの2人がスキューバ・ダイビングに出合うまで
大島さん一家は、哲哉(てつや)さん、利香(りか)さん、小学生の息子さん、幼稚園に通う娘さんの4人家族。
哲哉さんは神奈川県の出身で社会人になってしばらくは上場企業でサラリーマンをしていましたが、仕事を辞めて2000年7月に阿嘉島に移住しました。
利香さんは兵庫県の出身。アルバイトや会社員、都市型ダイビングショップスタッフを経て、2000年4月に阿嘉島へやってきました。
都心部で暮らしていた2人がなぜ沖縄、それも慶良間諸島の小さな島・阿嘉島へとたどり着いたのでしょうか。
「これだ!」という直感のみを信じてここまできた!
ー哲哉さんとスキューバダイビングとの出合いは偶然だったといいます。
哲哉さん(以下 哲):「もう25年以上ダイビングをし仕事にもしていますが、社会人になってすぐのハワイ旅行の際、体験ツアーに参加したことがきっかけでした。
その時は本当に軽い気持ちだったんです。
でもいざタンクを背負って海の中に潜ってみると『海の中で息ができるなんて!』と、感動が止まりませんでした。
もともと海が好きでよく素潜りはしていたものの、結局は数分で海から出なくてはなりません。
これがダイビングだと、ずっと海の中にいられるんです。
その喜びを感じた瞬間、直感的に『これだ!』と」
利香さん(以下 利):「私も『これだ!』という直感から始まっています。
しかし私の場合、実は一度もダイビングをしていないのにその直感がなぜか働いたんですよ(笑)。
もともとは体育教師になりたくて体育大学を目指すものの受験に失敗、その後も記者を目指すものの通っていたビジネススクールで私以外の生徒が退学したために学んでいた学科が存続できなくなり、不本意ながら私も辞めることになったんです。
志は常にあるものの、なぜかうまくいかない歯がゆい青春時代を過ごしてきました。
そんな時、本屋で立ち読みしていた際に偶然手に取った『ダイビング雑誌』を見た瞬間、『これだ!』と。『これしかない!』と。
人生に光が舞い込む感覚が湧き出て、一度も潜ったことがないのに次の瞬間『ダイビングのインストラクターになる!』と決意していました」
ダイビングインストラクターになぜなろうと思ったのか
ー一度も経験のない段階でインストラクターになろうとするとは!すごく思い切った人生ですね!
利:「せっかく『これだ!』と思えることが見つかったのだから、突き進みたいという気持ちがあって。
でもインストラクターになりたいといっても体験ダイビングすらしたことがなかったので、なかなか大変でした。
ライセンスを取得後、働きながら月に30本ほど海に潜る生活を続けていましたね。
潜れば潜るほどインストラクターになりたいという思いは増幅し、平日の昼は会社員、平日の夜はジムでのトレーニング、そして土日だけのインストラクターを始め、週休0日のハードな毎日となりました」
ー哲哉さんもいきなりインストラクターになろうと思ったのですか?
哲:「いいえ、僕の場合は漠然となりたいなという思いはあったものの、休日に趣味でダイビングを楽しむ程度でした。
しかし父が肝臓がんで亡くなったことをきっかけに、『インストラクターになりたい』という思いが止められなくなって…。
どれだけ会社に尽くしても、病気になったら会社は何もしてくれない。どうせなら好きなことをしたいな、と思うようになりました。その頃すでに20代後半になっていたのでラストチャンスだと思い、仕事をスパッと辞めて沖縄県那覇へと渡り、インストラクターの修業を始めました」
ついに地元から離れ、阿嘉島へ
神奈川県、兵庫県でそれぞれ暮らしていた2人が出会ったのは、沖縄慶良間諸島の小さくも美しい島・阿嘉島でした。
念願のインストラクターになった2人が阿嘉島へ
ー神奈川県と兵庫県出身のお2人ですが、阿嘉島へはどういう経緯でやってこられたのですか?
利:「インストラクターになってしばらくは、地元兵庫県に住み、都市型ダイビングショップ(店舗は街中にあり、海まで車で移動する)で働いていました。時々ヘルパーとして宮古島や西表島の現地型ショップ(海辺にあるダイビングショップ)でお手伝いをしていましたが、都市型と現地型は全然違うんです。
毎日のように同じ海に潜っている現地型ショップのインストラクターはその海を知り尽くしています。それに対して、週末だけ車でやってきて海に潜る私は到底叶わないと思いました。
いつもそばにある『自分の海』というスタイルに憧れたんです。
それから、きちんと腰を落ち着けて働ける『自分の海』を持つお店を探していたときに、ご縁があり阿嘉島のダイビングショップにたどり着きました。そこで出会ったのが彼(哲哉さん)でした」
哲:「僕の場合、那覇の大型ダイビングショップに勤めていたのですが、阿嘉島にある支店が人手不足になり、手伝うことになったのがきっかけですね。
ダイビングのメッカである慶良間諸島の海へは那覇からも日帰りツアーで潜りに来られるのですが、那覇から来て潜るケラマの海と、阿嘉島から潜りに行けるケラマの海はまったく違うんです。
最初は阿嘉島の存在すら知らなかったのに、いつしか阿嘉島に夢中になっていましたね」
小さな島での独立、そこにはどんな苦労が?
ー自然な流れで阿嘉島にたどり着いたのですね。雇われインストラクターではなく、いずれ独立することは事前に決めていたのですか?
哲:「会社員を辞める時に母をがっかりさせてしまったので、辞めるからには絶対に独立すると心に決めていました。
那覇で修行をしていたときも、独立するつもりで必要な知識や技術を習得しようと意識していました。まさか阿嘉島で独立するとは思ってもいませんでしたが(笑)」
利:「私は彼との出会いによる影響が大きかったと思います。サラリーマン家系でしたので、自営業なんてとんでもない!と(笑)。
でも今となっては案外向いているのかなあと思っています。やはり何事もやってみないとわかりませんね」
ー生まれ故郷から遠い阿嘉島で、個人のダイビングショップをオープンするまでにどのような苦労がありましたか?
哲:「阿嘉島は人口250人ほどの小さな島なので、不足がちな住宅や店舗の問題、すでに多数あるダイビングショップとの関係など、一筋縄では独立できない状況でした。
でもなんとしてもという思いもあったので、海の清掃活動(オニヒトデの駆除作業など)に積極的に参加したり、島の行事に関わらせてもらったりする中で、自然と島の方々と交流が深まり、一個人として認めてもらえるようになったんです。
島全体としてはダイビングショップの数を減らしたいはずなのに、『独立したいんです!』としつこく言い続けていたら(笑)、次第に島民の方々が応援してくれるようになりました。
そうしているうちに、ご縁が重なって2005年に『からはーい』という屋号でダイビングショップをオープンすることができました。阿嘉島に来て5年目のことです」
ー哲哉さんと利香さんのお人柄が島の方々に受け入れられたのですね。自営業者となってよかったことは何ですか?
利:「子育ての面で特に思うことが多いですね。
『からはーい』をオープンしてから子供たちが生まれたのですが、毎日長い時間家族で一緒に過ごせることはよかったと思っています。
繁忙期はなかなかままならない時もありますが、オフシーズンは家にいる時間が長いので、家族みんなで過ごす時間が普通の家庭よりも長いと思います。
そして私たちは夫婦は、ほぼ一日中一緒(笑)。
自営業なので、仕事のスケジュールも調整しやすく、学校行事にも参加できます。都会での生活と比べると、特に父と子の結びつきが強いように感じますね。
親である私たちが好きなことを追いかけて南の島に行き着いたわけですから、子供たちには説明せずとも『好きなことをしっかりやること』『どの道にも進んでいけること』の大切が伝わっているのではないかと信じています」
美しくも不便な阿嘉島での生活、ズバリ魅力は?
ー自然豊かな阿嘉島での暮らしはいかがですか?
利:「今の時代で考えると、びっくりするぐらい不便です。コンビニがなく地元の商店で買い物をしますが、曜日によっては卵や牛乳すらないときもあります。
日用品もなかなか手に入らず、子どもたちが学校で画用紙や墨汁が必要だとなってもすぐには購入できません。インターネットで買えるようになってずいぶん楽にはなりましたが、まだまだ不便なことだらけです。
それでも、不便さには代えられない素晴らしい魅力がこの島にはたくさんあります。
歩いて行ける場所に美しい海があり、夜になると空一面に星が瞬き、朝起きると朝日が海を照らし美しく色を変えます。
風が冷たくなったから、風向きが変わったから雨が降るなど、阿嘉島に来てから気候の変化を肌で感じられるようになりました。
そしてケラマの海は、月の満ち欠けに深く関係のある『旧暦』どおりに動いています。
自然の動きが人々の暮らしにもそのまま影響をもたらすので、昔の人の習わしどおりに時間が流れている島といってもいいかもしれません。
日本全国探しても阿嘉島のような島はあまりないと思います。
また暮らしている人々の関係性が近いのも大きな魅力です。
自分の子供でなくても悪いことをしたら近所の大人が叱ってくれたり、突然雨が降って来たら大声で『りかちゃ~ん!雨降ってきたよ~』と教えてくれたり、しばらく留守にして戻ると『おかえり~』と言ってもらえたり。
まるで昔の日本のようじゃありませんか?『私の居場所はここだ!』という感覚は、何物にも変えがたい宝物です」
ゲストとの出会いについてどう考えていますか?
ーそんな阿嘉島に訪れるゲストとの出会い。ゲストにはどんな体験をして欲しいですか?
哲:「まずは阿嘉島の大自然をあるがまま感じていただきたいですね。
そして我々は、ゲストさんが大自然に触れたことで起こる生き生きとした表情を見るのがたまらなく幸せなんです。
海は危険なフィールドです。そこに自分が飛び込むことで、感情が揺り動かされ『生きている』と実感することができます。
海に入るまでは言葉少なで表情の固かった人も、ご案内した後は途端にキラキラとした笑顔を見せてくれるんです。
自然の力は本当に偉大!その感動を分かち合いたいですね」
利:「できれば日帰りではなく、泊まりで遊びにきてください!もちろん日帰りでも楽しめるのですが、阿嘉島の魅力は泊まっていただいたほうがより感じられると思います。ゆっくり過ごすことで、自然とともに時が流れる阿嘉島ならではの空気感がわかるんです。
日中はツアーに参加して美しい海を全身で感じ、海から出たら太陽の動きに伴って空の色が刻々と変化していくのを眺め、暗くなると、夜空に広がる満点の星空を満喫できます。朝日もとてもきれいです。朝、阿嘉大橋を渡れば、橋の下をカメやエイが悠々と泳いでいる姿を見られることもあります。阿嘉島にいるだけで心癒されます。日帰りでは伝わらない魅力がたくさんあるので、ぜひゆっくり泊りがけでお越しくださいね。お待ちしています」
ー最後にメッセージをお願いします。
利:「『一度きりの人生』なのでやりたいと思ったことはやったほうがいいと思います。私はこれまで『やらなきゃよかった』と思ったことは基本的にはありません。自分たちがやりたいと思ってやったことなので後悔はありません。その当時失敗したようなことでも、今となってはいい笑い話になっています。
自分の目的に関係ないような一見、寄り道のようなことも、今となっては何も無駄なことはなかったなあと思います」
哲:「この仕事の醍醐味の1つに『人との出会い』がありますが、いろんな経験をされている方ほどお話が面白く魅力的だと常々感じます。
好奇心いっぱいに多方面に手を伸ばす方のお話は華やかですし、1つのお仕事を深く探求されている方は興味深いお話がじわじわと沸いてきて楽しいです。
もしもこの記事を読んでくださるみなさんといつかお会いできるのであれば、阿嘉島の大自然を介して、心の交流まで広げることできればこれ以上ない幸せです」
取材後記〜そとあそびナビゲーター・山川が最後に感じたこと〜
なぜ今回、私がこのような記事を執筆したのか。それには理由があります。
私事ですが、今月をもってそとあそびナビゲーターを卒業することになりました。
そとあそびナビゲーターとして約2年間、アウトドア・アクティビティツアーを取材してきた中で最終的に思ったこと。
「やはりガイド付きツアーって素晴らしい」!
今回、最後の記事を書くにあたり、改めてみなさんにこのことをお伝えするにはどんな方法がいいのだろうかと考えました。
そしてたどり着いたのが「ガイドさんの人生そのものをそのまま伝えてみよう」ということ。
そんな私の思いに共感してくださったのが、阿嘉島でダイビングショップを営む大島さんご夫妻でした。
実は大島さんへの取材は今回が2回目となります。
初めての取材は2018年2月、阿嘉島へ足を運び、ダイビングとシュノーケリングツアーを体験取材させていただきました。
ご夫妻とお話しする中で、常識にとらわれず道なき道を切り拓き、Only Oneの人生を歩まれているお2人の生き方に共感しました。
こんなにも素敵な生き方をしている人がいること、そして人生は自分次第でいくらでも切り拓けることをもっと多くの人たちに知ってほしい。
そしてそんな素敵な方々がナビゲートくださるからこそ、アクティビティ・ツアーがこんなにも楽しくなる、そんなことが伝われば、そんな思いで今回の企画を立案しました。
大島夫妻とお話しをして改めて感じたこと、それは「これだ!」という自分の直感を信じて行動することの大切さです。
頭で考えてしまうと、できない理由がたくさん出てきて何もできなくなりますが、直感を信じて思い切って一歩足を踏み出すと、人生が不思議とうまく流れ出し、想像もつかなかったところへ自分を運んでいってくれます。
ご縁がご縁を呼んで進むべき方向へ自然と流されていくような感覚です。
安定している状態からレールを外れて自分の好きなことをするのは躊躇したくなりますが、自分の人生の責任を自分でとる覚悟をもって行動すれば必ず道は拓けます。
今の自分の生き方にモヤモヤとした何かを感じている方は、ぜひいろんな世界に飛び込んで「これだ!」と思えるものを探してみてください。大島夫妻のように20代でそれを見つける人もいれば、もっと歳を重ねてからかもしれません。
大好きなことは一生のうちにそう何度も出会えません。いつか自分の大好きなものに出会えることを信じて、出会えたときにはその感覚を大切にしてください。私もそのことに改めて気づかされました。
「ガイド付きツアーの魅力」というのは、こういったガイドさん、インストラクターとのふれあいの時間にこそあるのではないでしょうか。
普通なら出会わないような人と一期一会で出会うことの素晴らしさ。
ツアー時間はわずか数時間かもしれません。しかしその背後に流れている時間を肌で感じられるのが、大自然で人と人とがふれあえるツアーの醍醐味だと思っています。
その楽しみをぜひ味わっていただきたい、それが最後にお伝えしたかったメッセージです。
大島さんご夫妻のツアーに参加したい人はこちらから!
阿嘉島の美しい慶良間ブルーを感じられるツアー!
大島さんご夫妻のアットホームなおもてなしをぜひ肌で味わってください。
“体験ダイビング”だけでなく、“ボートシュノーケリングツアー”も開催していますよ。
- 沖縄県島尻郡座間味村阿嘉 阿嘉港
アウトドアレジャー専門予約サイト「SOTOASOBI(そとあそび)」では、このほかにも楽しめるツアーを数多く紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
(取材:山川朝未)
※掲載されている情報は公開日のもので、最新の情報とは限りません。
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