ロッククライミング初心者のための入門講座では、ロッククライミングに関しての基礎知識をわかりやすく丁寧に説明しています。まずは基本を理解して上達のコツやヒントをつかんで中級者、そして上級者を目指してください!
クライミングと聞くと、危険な岩場をよじ上る上級者向けの高度なスポーツ、というイメージがありますが、実は初心者でも体験できる機会が増えているのをご存知ですか? 最近ではボルダリングジムも急増し、子ども用のクライミングウォール(人工壁)も大人気。室内で腕を磨き、岩場に挑戦していく人も多いそう。安全確保とクライミングの両方の技術をしっかりと磨いていくことで少しずつレベルアップし、大きな達成感を味わえるのもこのスポーツの魅力です。
フリークライミングとは、ロッククライミングの内、安全のためにロープやカラビナなどの確保用具は使用しながらもそれに頼ることをせず、自分の技術と体力で岩を登るスタイルのこと。登りきった結果、確保用具を使用しないで登ったのと同じなので「フリー」の名が付いています。
また、山頂を目指すために岩や氷壁などを登る「アルパインクライミング」に対し、山頂を目指すことを目的とせず、岩を登る行為そのものを楽しむことを目的としたクライミングのことを指す言葉でもあります。
【フリークライミングの主なスタイル】
リードクライミング
基本的に、クライマー(登る人)とビレイヤー(下でロープを確保する人)の二人一組で行う登り方。クライマーはあらかじめ岩に打たれているボルトや、ナチュラルプロテクションと呼ばれる確保支点を作るための器具を岩の割れ目などにセットし、ロープを通しながら登ります。ビレイヤーはクライマーが登るごとにロープを繰り出し、もしクライマーがフォール(墜落)したときはロープを止めるなど、安全確保を行います。お互いの信頼関係が重要視されるスタイルです。
トップロープクライミング
初心者でも挑戦しやすいのがこのスタイル。あらかじめ岩の終了点にロープを掛けておき、片方のロープをクライマーにセットし、もう片方をビレイヤーがしっかり確保します。このため登っている間、クライマーは常に上からロープでつながれている状態なので、「リード」のように垂直にフォールする心配があまりなく、登ることにしっかり集中しやすいとされています。
ボルダリング
3〜4メートルほどの低い岩で行われるシンプルなスタイル。多くの場合、岩の下にマットを敷き、待機中のメンバーはクライマーがフォールしたときなどに危険が少なくてすむよう、サポートを行います。また、最近では都内を中心にボルダリングジムが急増しており、まずはジムで練習してから岩場デビューする人も増えています。
【フリークライミングに必要な道具】
ここでは、上記で紹介した「トップロープクライミング」を行う際に、最低限必要な道具を想定してご紹介します。このほかにも条件や必要に応じて道具を足していきましょう。
クライミングシューズ
靴底が大変滑りにくく、足にフィットした形状の靴
ロープ
クライミング専用の命綱。ザイルと呼ぶことも。
ハーネス
安全確保のためのベルト。腰周りにつけるものが主流。
カラビナ
主にロープと確保支点、ハーネスなどを繋げるための器具。
確保器
ロープを止めたり繰り出したりするための器具。
チョーク/チョークバック
滑り止め用の粉。
ヘルメット
【フリークライミングの歴史】
アルパインクライミングのように、山頂を目指すためのクライミングは、20世紀以前のヨーロッパではすでに盛んに行われていました。当時のアルプスの名立たる高峰と未踏の困難なルートの初登頂を競い合った登山史は、そのままクライミングの歴史といっても過言ではありません。
一方で、ヨーロッパに遅れて始まったアメリカの登山文化の中心地は、カリフォルニアのヨセミテ国立公園内の渓谷でした。1940年代のヨセミテ開拓期以降、アメリカ人クライマーたちは巨大岩壁の登攀テクニックを急激に進歩させます。そして60年代ごろ発展した「できるだけ器具を排除し」「頂上に立つことを目的とせず、あえて困難な部分を登る」というスタイルは、新たなスポーツとしての「フリークライミング」を確立していきました。70年代になるころには各国からこぞってクライマーがこの地に押し寄せ、クライミングの黄金時代を迎えます。
日本では、1920年代(大正初期)からすでにロッククライミングが盛んにおこなわれていましたが、登攀のための道具を使わずに登る「フリー化」が進んだのは70年代後半ごろ。日本人クライマーがヨセミテを訪れたことに端を発します。以来、谷川岳、小川山、城ガ崎など、国内各地の山々で次々とクライミングルートが開拓されていき、80年代以降には人工壁が登場。今ではさまざまな場所にクライミングジムができ、子どもから高齢者まで気軽に楽しめるスポーツとして親しまれるようになりました。